ものづくり従事者が鉄鋼材料を学ぶべき理由を解説

ものづくり従事者が鉄鋼材料を学ぶべき理由 鉄鋼材料を学ぶ
鉄鋼材料を学ぶ
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機械や構造物などを作るとき、材料に鉄鋼を使う場面がよくあります。
このとき、製作者は鉄鋼の性質をよく理解していないと、よいものは作れません。
ものづくりに従事する人は、鉄鋼材料の知識が必須です。
とは言え、どのようにして鉄鋼材料について学べばよいか分からないという人が多くいます。

本記事では、ものづくり従事者が鉄鋼材料を学ぶべき理由を解説しています。
後半では、鉄鋼材料について最低限学ぶべきことを解説していますので、ぜひ最後までご覧ください。

ものづくり従事者に鉄鋼材料の知識が必要な理由

ものづくりに従事している人は、鉄鋼材料の知識が必須です。
なぜなら、世の中にある多くの「もの」に鉄鋼が使われているからです。

身近なもので言えば、スプーン、ナイフ、包丁、キッチン台、インテリア、屋根などがあります。
外を見渡せば、ガードレール、橋、鉄塔、ビルなどの建造物にも鉄鋼が使われています。
私たちが普段使用する大型家電や自動車にも、そのボディや内部に鉄鋼が多く使われています。
また、加工機械、建設機械、石油プラントの高温容器、火力発電所のボイラやタービン、原子力発電所の圧力容器など、産業や人々の暮らしを支える大きな構造物にも必ず鉄鋼が使われています。

このように、多くの製品、機械、建造物、構造物に鉄鋼が使われています。
その理由は、鉄鋼は高い強度を持っており、大きな荷重や衝撃、摩擦に耐えられる力があるからです。
また、色んな形状に加工しやすいことも鉄鋼が使われる理由の一つです。
鉄鋼の優れた性質のおかげで私たちの暮らしは支えられ、快適に過ごせています。

何も、使われている材料は鉄鋼ばかりではありません。
鉄鋼以外の金属では銅、アルミニウム、チタンなどが使われることもあります。
しかし、金属製品の90%以上は鉄で作られていると言われています。[1]
これは、鉄資源が地球上に豊富に存在することに由来します。

鉄鋼がものづくりの材料として欠かせない存在である以上、ものづくりに従事する人は鉄鋼材料の知識が必須であるわけです。

鉄鋼材料の知識が必要となる場面

設計する人

実際に、どのような場面で鉄鋼材料の知識が必要となってくるのかを見てみましょう。

その代表例が、機械の設計です。

機械の設計時

機械の設計時、技術者は設計強度、使用環境、コストに見合った材料を選定する必要があります。

材料選定の候補材として、鉄鋼材料はマストと言っていいでしょう。
しかし、一口に鉄鋼材料と言ってもその種類は数えきれないほどあり、発揮する性質も多種多様です。

強度が高いものがあれば、低いものもあります。
加工しやすいものがあれば、しづらいものもあります。
熱処理するものがあれば、しないものもあります。

ここで鉄鋼材料の例を上げると、よく使用される鋼種に「SS400」「S45C」があります。
どちらも、炭素鋼という鋼種に分類される鉄鋼材料です。
成分がよく似た鉄鋼材料でありながら「この用途ではこっちを使う」といったように、明確に使い分けられています。
このような使い分けは、鉄鋼材料のことを理解していなければできませんよね。

「とりあえず強度があれば何でもいいのでは?」と思うかもしれませんが、それは間違っています。
鉄鋼材料の基本性質として、強度が高いと荷重に対して強いという性質がある反面、衝撃に対しては弱いという性質があるからです。

また、強度が高い材料はもれなく高価な材料となり、コストが上がってしまいます。
材料が硬い場合には加工に時間がかかり、リードタイムも要してしまいます。
そもそもその材料が、晒される温度やガスなどの環境に適さないという場合もあります。

機械設計の技術者は、そのようなことを念頭に置きながら適切な材料を選定する必要があります。

鉄鋼材料の加工時

鉄鋼材料を加工するとき、加工者にも鉄鋼材料の知識が必要となってきます。

鉄鋼材料は、材質によって切削のしやすさ、溶接のしやすさ、曲げやすさなどが変わります。
加工者が鉄鋼材料の知識を持っていると、「この材質は硬いから、ちょっと高いけど超硬のチップを使おう」とか「この材質はねばいから、切り屑がよく切れるチップを使おう」といったような検討ができるようになり、最適な条件で加工を行うことが可能となります。

鉄鋼製品の営業時

鉄鋼製品の営業を行う人もしかりです。

これは鉄鋼製品を売る業種に限った話ではありませんが、メーカーの営業マンは自社の製品のことをよく知っていないと、顧客に対してよいアピールができません。

顧客は製品の耐久性などを知りたいので、製品の材質を聞いてくることがあります。
どのような鋼種でできているかとか、靭性はどの程度あるかとか、温度は何度まで耐えられるかとか、そういった性質のことです。
そんなとき材質を理解していないと、「なんだ、材料のことを何も知らないのか」と思われてしまいます。

とは言え、営業の人で鉄鋼の知識が豊富な人はなかなか見かけませんが、知識が豊富だと、かなりの強みとなるはずです。

その他

その他、製品の検査を行う立場の人や、資材の購買を行う立場の人なども、扱う対象に鉄鋼材料があれば、鉄鋼材料の知識を知っておくに越したことはありません。

鉄鋼メーカーの技術者のように、もろに鉄鋼の製造に関わる職種であれば、鉄鋼の知識がないと仕事が成り立たないことは言うまでもありません。

ここでは、鉄鋼材料についてのみお話しましたが、他の材料であっても同じことが言えます。

鉄鋼材料の難しさ

人の前に積み上がった本

ここまで鉄鋼材料を学ぶ重要性について述べてきましたが、実際のことろ、鉄鋼材料は難しい学問です

鉄鋼材料についてしっかり学ぼうとすると、以下のようなことを勉強する必要があります。

  • 結晶構造
  • 状態図
  • 拡散
  • 相変態
  • 材料組織
  • 変形機構
  • 強化機構
  • 金属精錬技術
  • 熱処理技術
  • 表面処理技術
  • 成形加工技術 etc.

以上の内容のことが、たいていどの鉄鋼材料の専門書にも載っています。

実際に専門書を手に取ったことがある人なら分かるかと思いますが、「面心立方格子」だの「格子欠陥」だの「転位」だのと、非常に難しい内容の話が出てきます。
原子レベルの話が書かれているため、きっと読むのも嫌になってくるでしょう。

もし興味があればこれらのことを勉強しておいて損はありませんが、鉄鋼材料の技術者や研究者を目指す人ならまだしも、実践においてこれらの知識は、不要です

鉄鋼材料の初心者が学ぶべき項目

本と眼鏡

では、鉄鋼材料の知識を身に付けたい人はどうしたらよいか、気になりますよね。

鉄鋼材料の初心者は、まずは以下のことを覚えるとよいです。

まずは、これだけで大丈夫です。
必要になれば、その都度新しいことを勉強していくとよいです。

いずれの内容も、本サイトの『鉄鋼材料の基礎』にて、鉄鋼材料初心者向けに詳しく解説しています。
上で述べたこと以外にも、実践で役立つテーマをその中で解説しています。
ぜひ、あなたの知識向上にお役立てください。

出展

[1] 「鉄」の魅力:日本製鉄

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