【化学成分とは?】鋼に含まれている主要元素・合金元素を解説

鋼に含まれる成分 主要元素、合金元素を解説 鉄鋼材料を学ぶ
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多くの鉄鋼材料は「鋼」でできていますが、鋼にはさまざまな元素が含まれています。

鋼に含まれている元素のことを「化学成分」と言います。鋼の性質は化学成分の種類や量によって大きく変わるため、鉄鋼材料を使用する上で化学成分は重要なファクターとなっています。

そこで本記事では、鉄鋼材料を使用する上で理解しておきたい「化学成分」について解説しています。

この記事を読めば、鋼の主要元素や合金元素が分かりますよ!

この記事で分かること
  • 鉄鋼材料に含まれる成分の由来
  • 鉄鋼材料の主要5元素と鉄鋼材料における役割、影響
  • 炭素鋼と合金鋼の違い

化学成分について

化学成分とは

化学成分とは、材料内に含まれている成分(元素)のことです。

鉄鋼材料は鉄(Fe)を主成分とした合金であり、Fe以外の元素が必ず含まれています。

特に「炭素(C)、ケイ素(Si)、マンガン(Mn)、リン(P)、硫黄(S)」は鉄鋼材料の主要5元素と呼ばれ、鋼の性質や品質に影響を与える主要な元素として扱われています。

表1 鉄鋼材料に含まれる主要5元素

元素の名前英語名(読み方)元素記号
炭素Carbon(カーボン)C
ケイ素Silicon(シリコン)Si
マンガンMangan(マンガン)Mn
リンphosphorus(フォスフォラス)P
硫黄Sulfur(サルファー)S

成分の由来

鉄鋼材料に含まれている成分の由来、つまり「その成分がどこからやってきて鉄鋼材料内に入っているのか」について解説します。

次に示すように、鉄鋼材料の成分は原料に混ざっていた不純物や、鉄鋼材料を作る過程で意図的に添加された物質が由来となっています

鉄鋼材料に含まれている成分の由来
  • 原料に混ざっていた不純物
  • 鋼を精錬するために投入された精錬用物質
  • 鋼の性質を向上させるために添加された合金元素 

詳しく見ていきましょう。 

① 原料に混ざっていた不純物

鉄鋼材料の原料は、鉄鉱石です。

鉄鉱石の主成分は酸化鉄ですが、鉄鉱石にはC、Si、Mn、P、Sなどの不純物が混ざっています。

これらの不純物は、製鋼プロセスである程度取り除かれます。製鋼プロセスとは、鉄鉱石を還元して取り出した鉄を精錬し、不純物を取り除いてきれいな鋼を作るプロセスのことです。

ただし、鋼を精錬してもこれらの不純物は完全に取り除かれず、微量に残ってしまいます。

結果として、鉄鋼材料中にこれらの不純物が残存し、化学成分の一部となります。

② 鋼を精錬するために投入された精錬用物質

鋼の精錬についてもう少し詳しく見ていきます。

精錬では、溶けた鋼(溶鋼)の中に酸素を吹き込むことで不純物を酸化させ、不純物を取り除いていきます。

その結果、溶鋼中には酸素が多く存在することになります。

酸素は鋼に対して悪さをするため、フェロマンガン(FeMn)、フェロシリコン(FeSi)、アルミニウム(Al)などの物質を投入して酸素と結合させ、酸素を取り除いていきます。 この処理を「脱酸」といいます。

このとき投入された物質が、化学成分の一部となります。 

鋼の性質を向上させるために添加された合金元素

精錬によって不純物が取り除かれてきれいになった鋼は、強度がなく、そのままでは鉄鋼材料として使えません。

そこで、鋼を強化するために、使用目的に応じた合金元素が添加されます

合金元素を添加することで、鋼の機械的性質や物理的性質が向上します。このとき添加された合金元素が化学成分の一部となります。

鉄鋼材料の化学成分は、以上の成分由来によって形成されています。

各種成分について見ると、鋼に対して悪さをするものもあれば、有益な働きをしてくれるものもあります。

それについては次に解説していきます。

各種元素の役割

各種元素が鋼に対してどのような役割、影響を与えているか見ていきましょう。

主要5元素

炭素(C)

炭素は、鋼の硬さや強度を決める重要な役割を果たしています。

鋼は炭素の含有率が高いほど硬さや強度が増すため、要求される硬さに合わせて含有率が調整されます。
通常、0.02%から2.1%程度の範囲内で調整されます。

ケイ素とマンガンの役割

ケイ素とマンガンは、適度に含ことでそれぞれ鋼の強度と靭性(じんせい)の向上に寄与します。

通常、含有率はそれぞれ0.4%以下と0.8%以下のものが多いです。

ここで述べた靭性という性質については、のちほど詳しく解説します。

リンと硫黄の役割

リンと硫黄は、鋼を脆く(もろく)してしまう作用があるため、どちらも鋼においては嫌われる不純物です。

したがって、鋼の製造過程でなるべく含有率が低くなるように調整されます。
通常、それぞれ0.03%程度以下に抑えられます。

ただし、快削鋼のように硫黄の含有量を増やし、削りやすさを向上させている鉄鋼材料もあります。

なお、銅(Cu)、ヒ素(As)、アンチモン(Sb)、スズ(Sn)なども鋼の品質を悪くする有害な元素として知られています。

その他の元素(合金元素)

鋼は、必要に応じて主要5元素以外の元素が「合金元素」として添加されます。

合金元素は、鋼の性質を向上させたり、鋼に新たな特性を付与させたりする効果があります。

おわりに

鋼の化学成分について解説してきましたが、お分かりいただけましたか?

世の中にある多くのものが鉄鋼材料で作られているため、鉄鋼材料は「超重要」な材料です。そのため、機械や構造物などの設計や製作に携わる技術者は鉄鋼材料の知識が必須と言えます。

筆者も鉄鋼メーカーに入り、鉄鋼材料について猛勉強しました。鉄鋼材料の知識を習得するには、本を読んで基礎的なことから理解することが大切です。筆者のおススメの本を2つ紹介しますので、ぜひ手にとってみてください。

なお、鉄鋼ネットでは、ものづくり従事者が身に付けるべき「鉄鋼材料の知識」を多数情報発信しています。以下に記事の一覧を確認できるリンクを貼っておきますので、ぜひご覧ください。

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