【材料選定に役立つ】実用的な鉄鋼材料を13種類紹介!

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材料の知識
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鉄鋼材料と言えば金属製品や機械構造物の製作、建物の建設などに欠かせない材料ですが、鉄鋼材料にはたくさんの種類があります。

鉄鋼材料を使用するときは用途に見合ったものを選定する必要がありますが、初めて選定を行う人は「どれを選べばよいか分からない!」と思うはずです。

そこで本記事では、選定に役立つ実用的な鉄鋼材料を13種類紹介しています。

本記事を読むと、どのような鉄鋼材料があるかが分かり、それらの特徴や用途などがバッチリ理解できますよ!

本記事はこのような人向け
  • 鉄鋼材料の種類を知りたい
  • 鉄鋼材料を選定したいけど、どれを選定したらよいか分からない

鉄鋼材料は種類が多い

鉄鋼材料は、工業において欠かせない材料です。硬くて剛性があり、大きな荷重や衝撃などに耐えうる強度を有することから、機械構造物の製作や建物の建設などに使用され、活躍しています。

そもそも鉄鋼材料というのは、「鋼で出来た材料の総称」のことです。鋼は「鉄と鉄以外の元素の合金」を指しますが、炭素をはじめとしたさまざま元素が鉄の中に添加されて出来ています。鋼は添加される元素の量や種類によって強度や化学的性質が変わるため、さまざまなニーズに対応でき、今日までにたくさんの鉄鋼材料が開発されています。

ここで「日本産業規格(JIS)」について触れてみたいと思います。JISという言葉を一度は聞いたことがあるかと思いますが、JISは日本の産業製品に関する規格や測定法などが定められた日本の国家規格のことです。この中では、さまざまな種類の鉄鋼材料が定められ、名称化されています。その種類は、実に数百種類もあります。これでは材料の選定が難しいわけです。

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鉄鋼材料の基本的な分類

ここでは、鉄鋼材料の基本的な分類を解説したいと思います。

鉄鋼材料は成分による分類、製法による分類、形状による分類、特性による分類など、さまざまな分類の仕方があります。基本的に覚えていただきたい分類は、「成分による分類」です。

鉄鋼材料は成分によって大きく、「炭素鋼」と「合金鋼」に分類することができます。両者は基本的な性質として強度や靭性に違いがあるため、鉄鋼材料を使用するときは、どちらの材料に該当するかを把握するようにしてください。

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鉄鋼材料を使用する上で把握していただきたい分類がもう一つあります。それは、「製法による分類」です。

鉄鋼材料は製法によって大きく、「圧延鋼材(あつえんこうざい)」、「鍛鋼品(たんこうひん)」、「鋳鋼品(ちゅうこうひん)」に分類することができます。それぞれ「圧延」、「鍛造」、「鋳造」と呼ばれるプロセスで作られています。

さらに深堀りすると、圧延鋼材は高温プロセスで製造された「熱間圧延鋼材」と、常温プロセスで製造された「冷間圧延鋼材」があります。鉄鋼材料において最も一般的な材料は、前者の材料になります。製法の違いは材料の品質やコストなどに影響するため、求められた要求に応じたものを使用することが大切です。

実用的な13種類の鉄鋼材料

ここからが本記事の本題になります。ここでは、JISに定められている鉄鋼材料の中から、選定に役立つ実用的な鉄鋼材料を13種類紹介しています。本文の中で登場する「JIS G ~」という記号は、その鉄鋼材料が定められているJISのコードを表しています。

① 一般構造用圧延鋼材(SS材)

一般構造用圧延鋼材は、「JIS G 3101」に定められている鉄鋼材料です。本材料は、一般的な構造への使用に適した性質を有しています。

「一般的な構造への使用に適した材料」と述べましたが、例えば橋梁、船舶、車両などの構造物において、普通の構造材として使用したいときなどに適した材料です。つまり、靭性や耐摩耗性などの特殊な条件が求められる構造材などへの使用には適していません

本材料の材質は「炭素鋼」です。炭素を一定量含有しているため、適度な強度があります。また、鉄鋼材料の一般的な製法である「熱間圧延」によって製造されているため、「価格が安い」ことが本材料の特徴です。鉄鋼材料の中には焼入れ・焼戻しを行って靭性を改善できるものがありますが、本材料は焼入れ・焼戻しを行うことができません。

JIS G 3101には、「SS材」と呼ばれる5鋼種の一般構造用圧延鋼材が定められています。代表的な鋼種は「SS400」です。SS400は、最低引張強さとして400N/mm2を保証しています。市場ニーズが高く、流通量が多いため、求めやすい材料としてよく知られています。特に土木、建築分野では資材として大いに活躍しています。

② 溶接構造用圧延鋼材(SM材)

溶接構造用圧延鋼材は、「JIS G 3106」に定められている鉄鋼材料です。本材料は、溶接を行う構造物への使用に適した性質を有しています。

一般的に、鉄鋼材料の溶接部は溶接されてない箇所と比べてもろいため、大きな荷重や衝撃が加わったときに破壊の起点となりえます。そのため、溶接部には高い安全性と信頼性が求められます。本材料は、溶接欠陥や低温割れなどが発生しにくい成分設計がなされています。

材質は「炭素鋼」であり、組成的には先ほど紹介した一般構造用圧延鋼材の組成と似ています。ただし、こちらの材料は溶接性を確保するために「ケイ素(Si)」と「マンガン(Mn)」が添加されています。また、「リン(P)」と「硫黄(S)」の含有率を抑えて「靭性」や「溶接性」が低下しないような対策がなされています。

JIS G 3106では、「SM材」と呼ばれる11鋼種の溶接構造用圧延鋼材が定められています。代表的な鋼種は「SM490A」です。SM490Aは溶接用鉄鋼材料として広く普及しており、主に橋梁、建築、造船の分野で活躍しています。

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リン(P)と硫黄(S)は、鉄鋼材料の製造過程で混入する不純物元素です。材料をもろくさせる有害な元素として知られています。

③ 建築構造用圧延鋼材(SN材)

建築構造用圧延鋼材は、「JIS G 3106」に定められている鉄鋼材料です。本材料は、建築構造物への使用に適した性質を有しています。

前述の一般構造用圧延鋼材や溶接構造用圧延鋼材と同じく、材質は「炭素鋼」です。しかし、前述の材料と異なる点は、揺れなどに対する塑性変形能力、つまり「耐震性」が保証されている点です。かつて、建築材には一般構造用圧延鋼材や溶接構造用圧延鋼材が使用されていましたが、建築構造物に対する耐震性要求の高まりを背景に、現在では本材料の使用が主流となっています。

JIS G 3136では、「SN材」と呼ばれる5鋼種の建築構造用圧延鋼材が定められています。代表的な鋼種は「SN400B」です。建築構造用の鉄鋼材料として最も多く使用されています。

④ 機械構造用鋼材(S-C材、SCM材、SNCM材など)

機械構造用鋼材は、主に「JIS G 4051」と「JIS G 4053」に定められている鉄鋼材料です。本材料は、機械内部の構造材への使用に適した性質を有しています。

本材料は、機械の構造材に求められる高い強度、靭性、耐摩耗性などの特性が備わっています。そのため、自動車や建設機械、産業機械などの主要部材に広く使用されています。

材質は「炭素鋼」と「合金鋼」があります。炭素鋼でも十分な強度がありますが、合金鋼はより強度があり、「靭性」も有しています。歯車に使用するときは、浸炭処理や窒化処理を施して表面を硬化させる方法がとられています。

JIS G 4051では、通称「S-C材」と呼ばれる27鋼種の機械構造用炭素鋼鋼材が定められています。それぞれ炭素含有率が異なり、0.08%から0.62%までの幅があります。そのため、欲しい強度に合わせて材料を選定することが可能です。代表的な鋼種は「S45C」です。S45CはSS400と並ぶ代表的な炭素鋼で、自動車、一般機械、産業用機械などの多くの機械部品に使用されています。

JIS G 4053では、マンガン鋼(SMn材)、クロム鋼(SCr材)、クロム・モリブデン鋼(SCM材)、ニッケル・クロム・モリブデン鋼(SNCM材)など、材質別に40鋼種の機械構造用合金鋼鋼材が定められています。代表的な鋼種はSCM材の「SCM440」と、SNCM材の「SNCM439」です。どちらも高い靭性を有し、機械構造としての機能性に優れた材料ですが、SNCM439は特にその特性に優れています。自動車や機械の軸、歯車、軸受などの、荷重を支えて動力を伝達する部品などに使用されています。

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靭性とは、破壊に対する粘り強さのことです。靭性が高い材料は強い衝撃を受けたり荷重による変形を伴ったりしても破壊に耐えうる力があり、機械構造物では靭性が重視されています。

⑤ 熱間圧延鋼板(SPH材)

熱間圧延鋼板は、「JIS G 3131」に定められている鉄鋼材料です。本材料は、曲げなどの塑性加工に適した材料です。

熱間圧延鋼板は、厚さが最小で1.2mm、最大で14mmの板として販売されています。本材料は熱間圧延によって製造されており、最終的に製品がコイル状に巻き取られることから、「熱延コイル」、「ホットコイル」などと呼ばれています。

材質は低炭素量の炭素鋼であり、軟らかいことから加工性がよく、曲げなどの塑性加工に適しています。強度は低いため、強度よりも加工性や外装への適用を重視する場所で活用されています。

JIS G 3131では、「SPH材」と呼ばれる4鋼種の熱間圧延鋼板が規定されています。代表的な鋼種は「SPHC」です。SPHCはSS400やS45Cと並び、安価で汎用性の高い材料としてよく使用されています。自動車、建材、建機、容器、鋼管、電気製品など、幅広く使用されています。

⑥ 冷間圧延鋼板(SPC材)

冷間圧延鋼板は、「JIS G 3141」に定められている鉄鋼材料です。本材料は、絞りなどの塑性加工に適した材料です。

冷間圧延鋼板は、熱間圧延された鋼板を酸洗して黒皮を除去したのち、常温でさらに圧延して作られている鋼板です。表面は滑らかでつやがあるため、「みがき材」とも呼ばれています。板厚は最小で0.1mmと薄く、最大では3.2mmとなっています。熱間圧延鋼板に比べて寸法精度が高い点も特徴です。加工性に優れるため、絞り、深絞りなどの塑性加工に適しています。熱間圧延鋼板に比べて高価です。

JIS G 3141では、5鋼種の冷間圧延鋼板が定められています。代表的な鋼種は「SPCC」です。見た目の外観を重視する機械部品や、寸法精度が求められるような場所に使用されています。

⑦ ステンレス鋼(SUS材)

ステンレス鋼は、主に「JIS G 4303」に定められている鉄鋼材料です。本材料は、耐食性が要求される場面での使用に適した材料です。

台所シンクの材質でお馴染みのステンレス鋼ですが、その最大の特徴は「腐食しづらい性質をもつ」ことです。腐食を簡単に言えば、「サビ」です。一般的な鋼は大気下に長時間放置するとサビてしまいますが、ステンレス鋼ではそのようなことは起こりません。

ステンレス鋼は、「材料中にクロム(Cr)を10.5%以上含有している」ことが原則です。このクロムが「不動態被膜」と呼ばれる薄い酸化膜を材料表面に形成することで、外部からの腐食を防いでいます。ステンレス鋼は金属組織によって大きく、「フェライト系」、「オーステナイト系」、「マルテンサイト系」、「オーステナイト・フェライト系」、「析出硬化系」に分けられます。それぞれ材料の特性やコストが異なるため、使用するさいは用途に合わせて選定することが大切です。

なお、ステンレス鋼について定めているJISはたくさんあります。代表的なJISをいくつか挙げます。

  • JIS G 4303・・・ステンレス鋼棒の規格
  • JIS G 4304・・・熱間圧延ステンレス鋼板・鋼帯の規格
  • JIS G 4305・・・冷間圧延ステンレス鋼板・鋼帯の規格
  • JIS G 4308・・・ステンレス鋼線材の規格

ステンレス鋼は種類が多く、「SUS材」と呼ばれる約60鋼種のステンレス鋼が存在します。代表的なステンレス鋼は、オーステナイト系ステンレス鋼の「SUS304」です。強度、延性、耐食性、耐熱性、加工性のバランスがよく、家庭用品、建築用品、医療用品、工業用品など、幅広い分野で使用されています。

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⑧ 耐熱鋼(SUH材、SUS-HR材)

耐熱鋼は、「JIS G 4311」と「JIS G 4312」に定められている鉄鋼材料です。本材料は、耐熱性が要求される場面での使用に適した材料です。

鉄鋼材料にとって高温環境は「過酷な環境」となります。強度が落ちてしまい、常温では耐えていた応力よりも低い応力で破壊が生じるためです。また、応力が継続的に加わると、少しづつ材料が変形する「クリープ現象」が発生します。これらに加え、高温酸化や高温腐食も起こります。耐熱鋼は、それらの弱点を克服した材料になります。

耐熱鋼は、材質的にはステンレス鋼になります。そのため、前述のステンレス鋼が耐熱鋼にそのまま転用されているものもあります。耐熱鋼が使用される場所としては、火力発電所のボイラーやタービン、自動車や航空機のエンジン部品、ゴミ焼却処理設備などがあります。

JIS G 4311では、35鋼種の耐熱鋼棒・線材が規定されています。またJIS G 4312では、28鋼種の耐熱鋼板・鋼帯が規定されています。鋼種は「SUH材」と「SUS-HR材」の2種類があります。「SUS-HR材」は、通常のステンレス鋼を耐熱鋼に転用して規格化したものです。代表的な耐熱鋼は、オーステナイト系の「SUH660」です。高い耐熱性、耐酸化性、高温強度を有しており、ガスタービンディスクなどに使用されています。

⑨ 工具鋼(SK、SKD、SKH材)

工具鋼は、「JIS G 4401」、「JIS G 4403」、「JIS G 4404」で定められている鉄鋼材料です。本材料は、工具や治具などへの使用に適した材料です。

工具は、金属材料の切削加工や塑性加工などに用いられる道具です。硬い材料を切る、削る、曲げるなどのパワーが必要なため、工具には硬さと耐摩耗性が求められます。工具鋼はこれらの特性に優れています。

工具鋼は成分によって「炭素工具鋼」、「合金工具鋼」、「高速度工具鋼」に分けられます。後者ほど硬さと耐摩耗性に優れています。なお、高速度工具鋼は「高温でも硬さが低下せず、高速で加工できる」ことが売りとなっており、別名「ハイス」とも呼ばれています。ハイスは工具鋼の英語名称である「High speed tool steels」から来ています。

JIS G 4401では、「SK材」と呼ばれる11種類の炭素工具鋼が定められています。炭素含有率は0.55%から1.50%までの幅があり、炭素含有率が高いものほど耐摩耗性に優れています。やすり、ドリル、ハクソー、刃物、丸のこ、たがね、刻印などの小型工具への使用に適しています。代表的な炭素工具鋼は、「SK105(旧SK3)」です。

JIS G 4404では、「SKD材」と呼ばれる32種類の合金工具鋼が定められています。用途として、切削工具鋼用、耐衝撃工具鋼用、冷間金型用、熱間金型用があります。代表的な合金工具鋼は、「SKD11」と「SKD61」です。SKD11は、耐摩耗性と焼き入れ性に優れており、大型の冷間金型に使用されています。SKD61は、靭性と耐熱性を有しており、熱間金型に使用されています。

JIS G 4403では、「SKH材」と呼ばれる15種類の高速度工具鋼が定められています。合金元素が多く添加されており、硬さ、耐摩耗性、靭性、耐熱性が他の工具鋼と比べて各段に向上しています。使用時の負荷が大きな切削工具や鍛造用金型などへの使用に適しています。代表的な高速度工具鋼は、「SKH51」です。

⑩ ばね鋼(SUP材)

ばね鋼は、「JIS G 4801」に定められている鉄鋼材料です。本材料は、重ね板ばね、コイルばね、トーションバーなどのばねへの使用に適した材料です。

ご存じの「ばね」は力を加えると伸び、力を取り除くと元の形に戻る性質があります。そのため、ばねに使用される材料には「変形を元に戻そうとする力」が必要になります。そんなばねに使用されるばね鋼は、高い弾性限(降伏強度)、疲れ強さ(耐久性)、耐へたり性を有しています。基本的にばね等への熱間成型したのち、「焼入れ・焼戻し」を行って使用します。

JIS G 4801では、「SUP材」と呼ばれる8鋼種が定められています。代表的なばね鋼は、シリコン・クロム系の「SUP12」と、クロム・モリブデン系の「SUP13」です。SUP12は耐へたり性が優れていることから、自動車用懸架コイルばねに使用されています。SUP13は焼き入れ性が優れていることから、超大型のばねに使用されています。

⑪ 軸受鋼(SUJ材)

軸受鋼は、「JIS G 4805」に定められている鉄鋼材料です。本材料は、転がり軸受への使用に適した材料です。

転がり軸受は「ベアリング」とも呼ばれ、回転する軸を支え、また軸を滑らかに回転させるための部品です。転がり軸受に使用される材料には、高い「耐摩耗性」や「転がり疲労特性」が求められます。軸受鋼は、それらの特性に優れた材料です。転がり疲労特性を確保するために、非金属介在物量を少なくしている特徴もあります。

材質は、炭素含有率が約1%、クロム含有率が1.0~1.5%程度の高炭素クロム鋼です。そのままでは非常に硬いため、通常「球状化焼なまし」を行い、材料をやわらかくしてから加工し、焼入れ・焼戻しを行って使用します。

JIS G 4805では、「SUJ材」と呼ばれる4鋼種の高炭素クロム軸受鋼が規定されています。代表的な軸受鋼は、「SUJ2」です。SUJ2は極小から中形までのあらゆる軸受に使用されています。

⑫ 快削鋼(SUM材)

快削鋼は、「JIS G 4804」に定められている鉄鋼材料です。本材料は、被削性に優れた材料です。

被削性とは、「削られやすさ」のことです。この性質は、旋盤やマシニングセンタなどの切削加工において重視されています。加工しようとする材料の被削性が悪いと工具の摩耗が早くなり、交換の手間が増えてしまうからです。また、切削屑が伸びて排出されるような材料は、加工者が嫌います。それらの対策が施された材料が、快削鋼です。

快削鋼は切削性を向上させるために、硫黄、鉛、カルシウムなどの元素が少量添加されています。快削鋼は加工コストやリードタイムの低減に寄与するほか、仕上げ面が滑らかになり、見た目がよくなるメリットもあります。

JIS G 4804では、「SUM材」と呼ばれる13鋼種の快削鋼が定められています。代表的な鋼種は「SUM43」です。SUM43は優れた被削性を有しながら、S45Cに匹敵する高い強度も有することから、実用性の高い材料となっています。

⑬ 電磁鋼板

電磁鋼板は、「JIS C 2552」と「JIS C 2553」に定められている鉄鋼材料です。本材料は、電気機器に組み込まれる鉄心材料への使用に適した材料です。近年、電気自動車の普及によって需要が拡大している材料でもあります。

電気機器の鉄心材料には、高い磁気特性が求められます。優れた磁気特性を発揮するのが、電磁鋼板です。電磁鋼板はケイ素(Si)が多く添加されていることから、「ケイ素鋼板」とも呼ばれています。また、磁気特性に悪影響を与えてしまう硫黄、窒素、酸素などの不純物が極めて少ないという特徴もあります。

電磁鋼板は、磁気特性によって大きく「方向性電磁鋼板(GO)」と「無方向性電磁鋼板(NO)」に分けられます。方向性電磁鋼板は磁気特性が一方向にだけ有している点が特徴で、主に変圧器の鉄心材料に使用されています。無方向性電磁鋼板は磁気特性の異方性が小さく、主にモータや発電機の鉄心材料に使用されています。

なお、電磁鋼板は鉄鋼メーカーが独自に開発・規格化し、販売しているケースが多いです。

おわりに

鉄鋼材料について解説してきましたが、お分かりいただけましたか?

世の中にある多くのものが鉄鋼材料で作られているため、鉄鋼材料は「超重要」な材料です。そのため、機械や構造物などの設計や製作に携わる技術者は鉄鋼材料の知識が必須と言えます。

筆者も鉄鋼メーカーに入り、鉄鋼材料について猛勉強しました。鉄鋼材料の知識を習得するには、本を読んで基礎的なことから理解することが大切です。筆者のおススメの本を2つ紹介しますので、ぜひ手にとってみてください。

なお、鉄鋼ネットでは、ものづくり従事者が身に付けるべき「鉄鋼材料の知識」を多数情報発信しています。以下に記事の一覧を確認できるリンクを貼っておきますので、ぜひご覧ください。

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