国内には、多くの鉄鋼メーカーが存在します。代表的なところでは「日本製鉄」や「JFEスチール」が挙げられます。
鉄鋼メーカーが鉄を作っていることをなんとなく理解していても、その実態をよく知らないのではないでしょうか。鉄鋼メーカーがどのような企業なのか気になりませんか?
本記事では、鉄鋼業界のことに詳しい筆者が鉄鋼メーカーについて詳しく解説しています。本記事を読めば、鉄鋼メーカーの製造内容や具体的な企業名などを知ることができます。
鉄鋼メーカーのことをよく知りたい学生さん、社会人さん、投資家さんがたに有益な記事となっていますので、ぜひ最後までご覧ください!
この記事は、現役の材料エンジニアが書いています!
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鉄鋼メーカーとは?
鉄鋼メーカーとは、原料を使って鉄を作り、それを製品に加工して販売する企業のことです。
鉄の原料となるのは、鉄鉱石(てっこうせき)や鉄スクラップです。
- 鉄鉱石:自然から採掘される鉄の鉱石のこと
- 鉄スクラップ:鉄鋼建造物の解体などによって発生した鉄くずのこと
これらを炉内で高温処理することで鉄が作られ、あらゆる製品に加工されます。なお、鉄鉱石を使用して鉄を作る方法は「高炉法(こうろほう)」と呼ばれ、鉄スクラップを使用して鉄を作る方法は「電炉法(でんろほう)」と呼ばれます。
そんな鉄づくりの根幹となっている場所が製鉄所(せいてつしょ)です。メーカーによっては製鋼所(せいこうしょ)と呼んでいるところもあります。そこには大きな炉がいくつもあり、溶けた鉄が飛沫を上げながら大きな鍋に注がれ、鉄鋼製品が作られています。
鉄鋼メーカーの敷地は広大で、例えばJFEスチール西日本製造所倉敷地区は東京ドーム240個分の敷地面積があります。そこにはいくつもの工場があり、敷地内には線路が引かれていて資材運搬用の列車が走っており、一つの街のようになっています。
下の図は、鉄鋼製品の製造プロセスを示しています。鉄鋼メーカーで働く人たちは、これらの作業に従事しています。大きな鉄鋼メーカーともなると、炉内の火が消えることなく、絶えず鉄鋼製品が作られ続けています。
鉄鋼材料の製造プロセスは次の記事で詳しく解説していますので、あわせてご覧ください。↓↓
どんな製品を作っている?
鉄鋼メーカーは、主に次のような製品を製造しています。
- 普通鋼
- 特殊鋼
- 自動車用高強度薄鋼板(ハイテン)
- 電磁鋼板
- 鋳鋼品
- 鍛鋼品
名前を聞いてもあまりピンと来ないかもしれませんが、これらをひとくくりで言うと鉄鋼材料です。どれも見た目は“鉄のかたまり”ですが、それぞれ強度や物理的な特性などが異なります。
これらの製品は各方面に出荷されたのち、さまざまな加工が施され、私たちがよく知る製品へと生まれ変わります。つまり鉄鋼メーカーは、最終製品を作るための素材の製造を担っている企業ということになります。
先ほど示した「自動車用高強度薄鋼板(ハイテン)」や「電磁鋼板」は高い機能性があり、高級鋼とも呼ばれています。自動車などに欠かせない鉄鋼製品であり、日本が世界に誇れる優れた製品となっています。
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鉄鋼メーカーの役割
鉄鋼メーカーは、人々の生活基盤を形成する重要な役割を担っています。
先ほど説明したように、鉄鋼メーカーで作られた鉄鋼製品は各方面に出荷され、加工されて最終製品となります。
実は、鉄はもっともよく使用されている金属材料です。鉄と同じ金属材料にアルミやチタンなどがありますが、金属製品の約9割は鉄とも言われています。
そのため、周りを見渡すと多くの場所に鉄が使用されていることがわかります。ビル、橋梁、鉄道などの建造物は鉄で作ら、人々の生活基盤を形成しています。また、自動車や家電、調理器具など、多くの日用品にも鉄が使われており、人々の暮らしを支えています。
つまり、鉄がなければ、これらのものを作らることができません。鉄がなかったら、今日の豊かな生活が築かれることもなかったかもしれません。
そんな鉄を作っている鉄鋼メーカーは、社会の発展に貢献している重要な存在と言えます。
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鉄鋼メーカーの種類
鉄鋼メーカーの種類は大きく、次の2つにわけられます。
- 高炉メーカー:主に高炉法を使用して鉄を作るメーカー
- 電炉メーカー:主に電炉法を使用して鉄を作るメーカー
高炉法と電炉法の違いは先述した通りで、使用する原料や製鉄法に違いがあります。その他の違いとして、設備の規模感にも違いがあります。
高炉法で使用される設備には、メインとなる高炉のほか、鉄鉱石を焼結するための炉や、石炭を蒸し焼きにしてコークスを生成するための炉などがあります。非常に大がかりな設備を要するため、高炉メーカーはどれも大手企業となっています。
現在、国内にある高炉メーカーは、日本製鉄、JFEスチール、神戸製鋼所の3社のみとなっています。また、国内で製造される鉄(粗鋼)の約75%は高炉メーカーによるものです。
一方の電炉法は比較的シンプルな製鉄法であり、そこまで大がかりな設備を要しません。電炉メーカーは町工場から発展したところも多く、国内には多くの電炉メーカーが存在します。
環境保護の視点で見ると、電炉法は高炉法に比べてCO2の排出量が少ない(高炉法の約1/5)という特徴があります。そのため、電炉メーカーは近年注目が集まっています。
高炉法と電炉法の違いをもっと詳しく知りたい方は、次の記事をご参照ください↓↓
電炉メーカーの種類
先述した電炉メーカーは、製造する品目によってさらに次の3つに分けられます。
■ 普通鋼メーカー
普通鋼メーカーは一般的な電炉メーカーで、主に棒鋼や形鋼などの普通鋼を手掛けています。普通鋼の多くは、主に建築・土木分野で使用されています。代表的な電炉メーカーは東京製鐵です。
なお、電炉を持つ普通鋼メーカーによって形成されている団体に普通電炉工業会があります。本会には現在27社の普通鋼メーカーが登録されています。
■ 特殊鋼メーカー
特殊鋼メーカーは、主に工具鋼やステンレス鋼などの特殊鋼を手掛けるメーカーです。特殊鋼は自動車や機械の部品などに使用されています。特殊鋼メーカーでは大同特殊鋼や山陽特殊製鋼が有名です。
■ 鋳鍛鋼(ちゅうたんこう)メーカー
鋳鍛鋼メーカーは、鋳造や鍛造による鉄鋼製品を手掛けるメーカーです。特に鍛造品は、高い品質が求められる原子力発電所の圧力容器などに使用されています。代表的な鋳鍛鋼メーカーは日本製鋼所です。
鉄鋼メーカーの紹介
ここでは、国内の代表的な鉄鋼メーカーを紹介しています。
高炉メーカー
日本製鉄株式会社
日本製鉄は、国内最大手の鉄鋼メーカーです。製鉄事業を中核に、エンジニアリング事業、ケミカル&マテリアル事業、システムソリューション事業の4つの分野に進出しています。「総合力世界No.1の鉄鋼メーカー」を掲げるように、その技術開発力は高く、新しい鋼材を次々に世に送り出しています。世界15か国以上に製造拠点を展開しています。
JFEスチール株式会社
JFEスチールは、世界トップクラスの鉄鋼生産規模を持つ鉄鋼メーカーです。鋼板、形鋼、鋼管、など、多彩なラインナップを取り揃えています。「常に世界最高の技術をもって社会に貢献します」という企業理連のもと、鉄鋼製品をグローバルに提供しています。最先端の環境調和型製鉄プロセスの構築にも取り組んでいます。
株式会社神戸製鋼所
神戸製鋼所は「KOBELCO(コベルコ)」の名称で知られる鉄鋼メーカーです。素材事業では、鉄鋼以外にアルミも手掛けています。それ以外に機械系事業や電力事業も営む多彩な企業です。溶接材料やショベル、クレーンなどの建設機械などを製造するメーカーとしても有名です。2022年5月より、低CO2高炉鋼材「Kobenable Steel」を販売しています。
電炉メーカー
東京製鐵株式会社
東京製鐵は、国内トップの独立系電炉メーカーです。チャレンジ精神が旺盛で、従来高炉でしか作れなかったH形鋼や自動車用鋼材などの開発に挑み、成功させています。H形鋼ではトップシェアを誇ります。また、電炉メーカーで唯一薄板製品と厚板製品を生産しています。環境に優しい電炉鋼材を社会に広く普及させ、循環型社会の実現と低炭素社会の構築を図ることをビジョンとしています。
大阪製鐵株式会社
大阪製鐵は、日本製鉄グループの中核電炉メーカーです。等辺山形鋼や溝形鋼などの一般形鋼に強みがあり、エレベータガイドレールでは国内トップシェアを誇ります。インドネシアにも会社を設立し、海外展開しています。また、業界コストリーダーの実現に向けた取り組みを推進しています。
おわりに
本記事では、鉄鋼メーカーについて解説してきました。しかしスペースに限りがあるため、全てのことを細かく解説しきれていません。
もっと鉄鋼メーカーについて知りたいと思った方は、より詳しいことが書かれている参考書をご覧になってください。
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